オキアミ由来の新型オメガ3 クリルオイル

肝機能、生殖機能、脳の老化防止に

矢澤 一良 著 2012.11.27 発行
ISBN 978-4-89295-816-8 C2177 文庫サイズ 48ページ 本体 250円(税抜)

新たな「オメガ3脂肪酸」の登場

オキアミ由来の新型オメガ3 クリルオイル

「クリルオイルの機能性についてお尋ねしたいのですが」
 ここ数年、そうした問い合わせが私のところに各所から寄せられています。
 クリルオイルというのは、海中を浮遊している動物プランクトンの一種「オキアミ」から抽出した油のことです。その研究はまだ始まったばかりですが、専門家のあいだでは「素晴らしい新素材が見つかった」という確信に満ちた期待が湧き上がっています。もちろん、私もその一人です。
 なぜ、新参者のクリルオイルに、これほど熱い視線が注がれているのかというと、そのキーワードは「オメガ3脂肪酸」にあります。
 オメガ3脂肪酸は、魚の油に豊富に含まれている機能性成分で、DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)はその代表です。DHAは脳にいい成分として、EPAは心臓にいい成分として広く知られ、すでにサプリメントの世界ではスタンダード食品となっています。
 オメガ3脂肪酸は、海洋生物全般に含まれていますから、当然、クリルオイルにも含まれています。しかし、単にオメガ3脂肪酸を含んでいるだけなら、いまさら大きな話題にはなりません。
 クリルオイルが注目されるのは、きわめて特殊な形でオメガ3脂肪酸が含まれている点です。一般の魚油に含まれているオメガ3脂肪酸が「トリグリセリド結合型」であるのに対し、クルオイルは従来のトリグリセリド結合型に加えて、「リン脂質結合型」のオメガ3脂肪酸を含んでいるのが最大の特徴です。
 リン脂質結合型オメガ3の効果は本文で詳しくお話ししますが、従来のトリグリセリド結合型を超える特性および効果がいくつも報告されています。つまり、クリルオイルは、魚油の効果を踏襲しながら、それを上回るパワーを秘めているのです。多くの専門家が注目している理由はここにあります。
 私自身、魚の油に豊富に含まれる「オメガ3脂肪酸」の研究に着手してから二十年以上の歳月が経ちました。
 DHAについては、1990年にマグロの目玉の後ろの脂肪(眼窩脂肪)にDHAが多く含まれることを発見し、その翌年にDHAを高純度に精製する技術を開発。これをきっかけに一気にDHAの生産量が増し、DHAに関する研究が世界レベルで進みました。
 当時の研究データは、魚油を研究している長老(!)たちにとっては、今さら語る必要もないスタンダードなものなのですが、私が教鞭をとっている大学の学生たちに話すと非常に感動します。自分たちが生まれた頃、すでに科学的なデータが揃っていたことに驚くようです。
 この経験から、時代はつねに移り変わっていることを意識し、大切なことは語り継いでいかなければならないのだと実感しました。
 クリルオイルの登場が、オメガ3脂肪酸を見直す新たな契機となり、より多くの人の健康に寄与することを心から願っています。

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