EPAは心臓を守る潤滑油

心臓病・がん・高脂血症など成人病予防の決定打

浜崎 智仁 中村 典雄 著 初版 1996.09.11 改訂版 2001.02.03 発行
ISBN 4-89295-415-2 C2177 文庫サイズ 48ページ 本体 250円(税抜)

心筋梗塞の死因になる不整脈の防止に

EPAは心臓を守る潤滑油

最も危険な不整脈「心室細動」
虚血性心疾患を起こした場合、生死を分ける重要なカギを握るのが、不整脈です。
不整脈とは心筋の収縮頻度に異常が起こった状態をいいますが、中でも最も危険なのが「心室細動」と呼ばれる不整脈です。
心室細動が起こると、心室のあちこちで不規則な収縮が起こり、心臓が血液ポンプとして働かなくなります。事実上の心停止です。心筋梗塞の発作後、病院へ運ばれるまでに、大半の人がこの心室細動で生命を落としています。

二重盲検法で魚油の効果が立証された
心室細動は、副交感神経が緊張していると、発生が抑えられることがわかっています。副交感神経とは、心身を休息させる方向に働く自律神経です。
実はつい最近「魚油」が副交感神経の緊張を高めることが明らかとなりました。
デンマークで行われた研究ですが、心筋梗塞を起こした患者さん55人を2群に分けて、一方には魚油を、もう一方にはオリーブ油(体に影響のない油)を二重盲検法で12週間とってもらい、副交感神経の変化を調べています。
二重盲検法とは実験薬(この場合は魚油)のほかに偽薬(この場合はオリーブ油)を用意して、対象者はもとより担当医にもどちらが本物かを試験終了時まで知らせずに行う厳正な検査法です。
24時間心電図をとってR-R間隔(一つの脈から次の脈までの時間)の変化で副交感神経の緊張度を調べた結果、魚油群のほうが、R-R間隔のバラつきが大きくなりました。つまり、魚油の摂取で、副交感神経の緊張が高まったということです。

「心室性期外収縮」の予防にも有効
このほか「心室性期外収縮」という不整脈に対する魚油の効果も報告されています。
心室性期外収縮とは、通常の規則的な心筋の収縮(心筋収縮)より速く収縮が起こってしまう状態で、繰り返し起こると、心室細動に発展する危険性が出てきます。
心室性期外収縮のみられる患者さんを対象に、二重盲検法で魚油の効果を調べた研究によれば、やはり魚油をとっている人たちのほうが、明らかに心室性期外収縮の発生が抑えられていたそうです。
心室細動の発生を予防できれば、例えば虚血性心疾患が起こっても生命をおとす危険性は少なくなります。実際に魚油をとっている人は、致死性の虚血性心疾患の発生率が低いことが知られています。(12頁)


その他のDHA・EPA関連書籍