EPAは細胞膜の構成成分
現代人の健康のカギを握る多価不飽和脂肪酸は、リノール酸をはじめとする「n―6系」と、α―リノレン酸をはじめとする「n―3系」に大別されます。
リノール酸を摂取するとアラキドン酸が、そしてα―リノレン酸を摂取するとEPAとDHAがそれぞれ体内で生じ、全身の約60兆の細胞の「膜」にとりこまれていきます。
細胞膜は、細胞どうしを仕切る壁であると同時に、細胞の働きを脇で支える立役者。次の2つの重要な機能を担っています。
@細胞を出入りする物質(栄養素やイオン、排泄物)の管理
Aホルモンに似た生理活性物質(エイコサノイド)の生成
1つ1つの細胞の働きが、全身の生命活動の源泉になっていることを考えれば、細胞膜の使命はきわめて重要です。この膜の主要成分が、アラキドン酸であり、EPAなのです。
EPAとアラキドン酸の関係
EPAとアラキドン酸は、互いに牽制しあいながら、細胞膜の機能に寄与しています。
例えば、両者が絶妙なさじ加減で、相反する生理活性物質を生み出し、血行をスムーズに保ったり、病原菌をやっつけるなど、生体機能をうまく調整しているのです。
ですから、どちらが不足しても健康に悪影響がでます。
とはいえ、EPAとアラキドン酸の必要量はわずかなので、飽食の日本では不足する心配はまずありません。問題は両者の摂取バランスです。
細胞膜中の脂肪酸バランスが崩壊
前項で述べたように、40年ほど前から、アラキドン酸の原料であるリノール酸の摂取量が増大しました。揚げ物、炒め物、加工食品のほか、ケーキや菓子類に至るまで、多くの食品はリノール酸の宝庫です。
一方、EPAの前駆体であるα―リノレン酸は、日常食べている食品にはほとんど含まれていません。EPAの補給源は、EPA自体を含んでいる魚介類に限られるため、魚をあまり食べない人では、細胞膜の脂肪酸バランスがアラキドン酸偏重に傾いているのは必至です。