中性脂肪を減らし、心臓を元気にするEPA

中高年の「メタボリック・シンドローム」〈高中性脂肪・高血圧・高血糖・肥満〉を一掃

矢澤 一良 著 2005.03.09 発行
ISBN 4-89295-602-3 C2177 文庫サイズ 48ページ 本体 250円(税抜)

EPAの摂取で「心臓死が減った」

中性脂肪を減らし、心臓を元気にするEPA

魚油カプセルを使った研究
イギリスで実施された研究(DART)では、魚を食べたときの効果が、EPAの豊富な魚油の働きによることが明らかにされています。
同研究では、心筋梗塞を発症した患者さん2033名を3つのグループに分けて、それぞれ以下の食事指導を行ないました。

@群=リノール酸を増やして、飽和脂肪酸(豚や牛脂に多い)を減らす。
A群=毎週2〜3回は魚を食べる。または「魚油のカプセル」で、EPAをはじめとするn―3系脂肪酸を1日0.5g摂取する。
B群=食物繊維を1日18g摂取する。

その結果、@〜B群の間で心筋梗塞の再発率に差はみられなかったものの、EPAの豊富な魚または魚油カプセルを摂取していたA群の患者さんは、他群に比べて、2年後の総死亡率が29%も低かったといいます。
つまり、魚や魚油を日常的に補給していると、たとえ心筋梗塞を起こしても助かる可能性が高いというわけです。しかも、A群の患者さんのうち、魚を食べていた人と、魚油カプセルをとっていた人では差が見られなかったと報告されています。

EPAで突然死が45%も低下
EPAそのものを投与した研究でも、大きな成果がみられています。
心筋梗塞を起こした約1万人の患者さんを追跡調査した研究(GISSI)ですが、EPAとDHAを3年半とってもらったグループの患者さんは、何も摂取しない対照群に比べて総死亡率が20%、心血管死亡率は30%も低く抑えられたのです。
また、EPAの前駆体であるα―リノレン酸を患者さんにとってもらった研究も報告されています。
虚血性心疾患を経験したことのある605名の患者さん(70歳以下)のうち、「α―リノレン酸を増やして、リノール酸を減らす」食事療法を行なったグループの患者さんは、そうでないグループに比べて、2年3ヵ月後の総死亡率が70%も低かったといいます。この結果は、心筋梗塞の予防薬としても知られるスタチンの効果を大幅に上回るものです。

手術後のバイパスの閉塞予防にも
さらに、EPAには、静脈移植手術後の、バイパスの閉塞を防ぐ効果も期待されています。
実際に、手術後の患者さん610名にEPAとDHAを一年投与した研究では、移植した血管の閉塞する危険率が有意に低下したと報告されています。しかも、n―3系脂肪酸の血中濃度が高いほど、危険率が低かったそうです。
以上のような成果を踏まえ、アメリカでは、n―3系脂肪酸を含む食品に対して「冠動脈疾患のリスクを軽減する効果」の表示が、FDA(食品医薬品局)によって承認されています。


魚油摂取栄養指導の効果

栄養指導群総死亡者心疾患死非致死性
心筋梗塞
@群(脂肪摂取量抑制)
  指導群(1018名)
  対照群(1015名)
111
113
97
97
35
47
A群(魚油摂取)
  指導群(1015名)
  対照群(1018名)
94
130
78
116
49
33
B群(食物繊維摂取)
  指導群(1017名)
  対照群(1016名)
123
101
109
85
41
41


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